誕生寺に隣接した2千坪もの公園には、100基以上もの文学碑・歌碑が立ち並びます。「詩歌のまほろば」として、全国から文人歌人の訪れが絶えません。
公園内の道、川に沿ってたくさんの碑が設置されています。
6月後半には、地元有志の皆さんによる、ほたる祭りが毎年開催されます。
笛吹川公園運営委員会
電話:086-728-2732
平成14年5月現在
1 |
鮎は瀬に棲み 鳥は樹に宿る 人は情の下に住む |
石井 十次 |
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2 |
茜草指武良前標野逝標野行野守者不見哉君之袖布流 |
犬養 孝 |
3 |
雲従無心来 還向無心去 無心無処尋 奠覧無心處 |
(木堂)犬養 毅 |
4 |
暮れてゆく木原の彼方ひとすぢの希望のごとくともしびうるむ |
植木 盛行 |
5 |
歳月は寂しき乳を頒てども復た春は来ぬ花をかかげて |
岡井 隆 |
6 |
雲のごとく高く くものごとくかがやき 雲の如くとらわれず |
小川 未明 |
7 |
西の衆は怖しと言ひし人ありぬ水掛不動に聞いてみなはれ |
奥田 清和 |
8 |
花もてる夏樹のうへをああ時がじいんじいんと過ぎてゆくなり |
香川 進 |
9 |
大慈大悲想ひゆくとき数珠玉の黒実が風に吹かれをりたり |
小林 貞男 |
10 |
青空の槻の木末に風が鳴るかぜになりたや鳥になりたや |
小見山 輝 |
11 |
冷々と夜放れゆく庭樹よりかく静かなる蝉のこゑ聞こゆ |
生咲 義郎 |
12 |
二つ居りて啼くこゑ聞けば相呼ばふ鳥がね悲し山の月夜に |
斉藤 茂吉 |
13 |
夜もすがら口中に異物無く眠るわが境涯の安けさあはれ |
佐藤佐太郎 |
14 |
屋敷をとりめぐる清流は、領主の居館に近い庄民の家々の用水として、その軒下の小溝に分かれ、流れた末は、やがて北の庄から南流して、耕地の上方二つの池に貯へられ、温められて田に流れ入り、そこから南の庄をうるほした末は、野末に行くにまかしている。 |
(笛吹川)佐藤 春夫 |
15 |
雑草にあらず野の花咲かしめて窯のめぐりに季ながき春 |
塩田 啓二 |
16 |
此の地、山常に緑にして水永へに清し。水静かにして月映らずといふことなく、かの幽遠極まりなき大自然の妙諦は、幼童が大静止の心鏡に如何ばかり深く刻まれしぞ。 |
(法念上人)杉山 栄 |
17 |
野菊咲く方へと道を教へつつ藺笠編むなる吉備をとめかな |
田波 御白 |
18 |
もし鳥になるならけふはあをばづく青葉の闇に何と哭かうか |
直木田鶴子 |
19 |
をさな神桃太郎の桃の流れ来む川とぞ思ふ水の流れを |
服部 忠志 |
20 |
鴬や山をいづれば誕生寺 |
正岡 子規 |
21 |
山裾の月夜の小道かげうすく白梅の花咲きてにほふも |
三鼓 翠渓 |
22 |
赤き柿食へば歯に沁みおもほゆる雪乱れ降るわれがふるさと |
宮 柊二 |
23 |
山なみ遠に春はきて辛夷の花は天上に雲は彼方に帰れ共帰るへ知らに越ゆる路 |
三好 達治 |
22 |
山行くはたのしからずや高山の青雲恋ひて今日も山ゆく |
結城哀草果 |
25 |
うす紅の芙蓉ゆれたり生き死にのいづれへいたる道かは知らず |
行本 昭子 |
26 |
死をいとひ生をもおそれ人間のゆれ定まらぬ心知るのみ |
吉野 秀雄 |
27 |
萌え亘る牧の起伏を食む牛の群ゆるやかに向きを変へゆく |
青井 翠 |
28 |
「母さん」と胸に呼び掛け撫づる碑の手に冷や冷やと秋の深さよ |
赤木 綾子 |
29 |
苗箱を洗ふ小川の草むらに蛍ひとつが光りそめたり |
赤木 雪子 |
30 |
落ちながら廻れば桐のつつ花の筒あふむきて瞬にかがやく |
赤木 三郎 |
31 |
長男はソロ次男と吾はコーラスにベートーベン第九の幕上がりゆく |
秋山 幸子 |
32 |
試射を阻むデモの隊列夕焼けて玩具のごとく遠ざかりゆく |
秋山 輝彦 |
33 |
遠景に枝をひろげるあふちの大樹今はみどりの実を結ぶころか |
飽浦 幸子 |
34 |
愚直なるわが生きざまを育みて那岐は永遠なる彩雲を抱く |
芦田 一郎 |
35 |
雪解けの水仙ほのか薫る庭未婚の吾子の素足が歩む |
芦田 房子 |
36 |
わが作るこの給食が肉作り血を作らむと思ふ生き甲斐 |
有道喜代子 |
37 |
笛吹の峰より遠くくだりきて弥陀のこゑとも清き川の音 |
有元 淑郎 |
38 |
月明かりわづかに差せるわさび田に水車のこぼす水が光れり |
稲田 昇 |
39 |
はだか木を揺りて山より吹く風は春のうねりのぬくさともなふ |
稲田富美子 |
40 |
集中治療室に発起人の一人を置きしまま八十一歳の同窓会成る |
上高 小夜 |
41 |
いち日の愚痴はここにし捨てよとぞ夕日被きて立つ那岐の山 |
上原 静子 |
42 |
来む世にもかかる歩みのあるべしと紅葉の渓を夫に従ふ |
植月 弘子 |
43 |
城跡の石段一気に駈けのぼる少年春のひかりをまとふ |
植木つね子 |
44 |
車椅子こぎて来し野に早春の蝶ひたすらに川越えてゆく |
宇佐美照子 |
45 |
咲きつげる木槿に輪廻転生の懐ひを投げて仰ぐ夏ぞら |
内田 温子 |
46 |
子が脱ぎし法衣のたぐひたたみつつわれには過ぎし妻の日おもふ |
漆間三絵子 |
47 |
久安三年手鏡とりて母と子がかたみに面を写せし哀れ |
景山あき子 |
48 |
夏逝きぬ逢はぬ日数を重ねつつ鬼灯ひとつ熟れて残りぬ |
片岡カヨ子 |
49 |
草いきれ炎えたつ坂をのぼりきて水番の汗を水路に洗ふ |
片山 幸子 |
50 |
この花の下に立つ日はいつならむ露店に妻とさくら苗選る |
片山 勉 |
51 |
なだらかな下りに風を孕みつつわが車椅子は天地の一点 |
勝山 秀子 |
52 |
音のなき世界に生くる少年が今朝自転車に飛ぶごとく行く |
神谷 和子 |
53 |
二の腕に葉影を揺らす夏の風わが子の上にはどんな風吹く |
河合 節子 |
54 |
呑みて来しことばが胸に膨れつつ鷺草の鷺がうす闇に翔ぶ |
河原千寿子 |
55 |
寄る波のかたちに青き藻はのこり秋潮くらき濱に人ゐず |
神林 敏夫 |
56 |
一人減り二人減りゆく鉱山の学舎の鐘が秋風に鳴る |
木村 良康 |
57 |
花ろうそく左右に小さく揺るる灯のかなたにしのぶ家族の歴史 |
暮町 キヨ |
58 |
呆けてゆく脳のあはひに残れるやわが名を呼びぬ姑は小声に |
黒瀬 紀子 |
59 |
寒空の暮れを早めて聞こえくる鐘は無量の彼方にて響る |
甲田 元子 |
60 |
とほき夏の記憶に翳る銀のナイフ和綴じの古書に今しあてがふ |
古玉従子 |
61 |
あざやかなみどり映せる片目川うねりてやさしわが父祖の里 |
小西美代子 |
62 |
かじか鳴く清き流れを見て立ちし橋なく人も戦ひに亡し |
小山 宜子 |
63 |
地をまろぶ春のあられは解けやすし老いたる母に待たれゐる道 |
斎藤 敬子 |
64 |
新妻の日より培う茶畑に金婚の今も杖つきて登る |
坂本 光枝 |
65 |
杳き日の諍ひごともうたかたと片目川の水澄みて流るる |
澤原 幸子 |
66 |
詠唱の声境内に満ち充ちて菩薩しづしづ山門を出づ |
志部 展 |
67 |
雲雀あがり川音いざなふこの園に歌人のこころ充ちて豊けし |
志部 迪夫 |
68 |
蜩の声沁みじみと笛吹の川面に入りて人の恋しき |
清水 教恵 |
69 |
はつなつの風にふかれてとびたてよさぎ草しろく咲くひとところ |
下村 とし |
70 |
広辞苑に栞を入れて君逝きぬそのページのみわれは記憶す |
杉本 節子 |
71 |
母在りし短かく遠き日を思へとあはれ仄かな紫陽花の蒼 |
杉山 勝子 |
72 |
婉曲にもの言うすべも身につきて目立つことなく人なかに居り |
鈴木 市松 |
73 |
わが村をめぐれる山のやはやはと萌えてを抱く生者も死者をも |
関内 惇 |
74 |
あかあかと山を出でたる満月がいま植ゑし田に歪みて映る |
園部千江野 |
75 |
暁のひぐらしと共に起き出でて藺草刈りたる世も遠きなり |
太安矢営子 |
76 |
日暮には間のある寺のしまひ鐘聞きて鎌研ぎ築地の草刈る |
高取 尚子 |
77 |
紫陽花より紫陽花までのこととして蜂の羽音のにぶき昼さがり |
竹井可珠実 |
78 |
呆け妻と心中せむとピストルを欲りし日ありき静かに懐ふ |
田口 延夫 |
79 |
花にのみこころとらはれ来し寺の公孫樹の新芽天に伸びたり |
玉木 茂子 |
80 |
廊の灯がほのかに寒気やはらげて眠りは繭につつまれてゆく |
寺尾千代子 |
81 |
タクト振る指揮者のごとく地上のものなべてを動かし太陽昇る |
同前 正子 |
82 |
澄みとほる箏の音いろのかなしみは純なるものの危ふさならむ |
徳山かつえ |
83 |
ゆらめきて散りゆく枯葉一枚の光と影をみて立ち止まる |
徳山 善重 |
84 |
悲しみの楽章のごとくたゆたひて黄蝶はつはぶきの花を離れず |
豊福あけみ |
85 |
雪ふれば山に埋めむ傷心のわがうつそ身の捨てどころなし |
中島百合子 |
86 |
白壁の家並川面に映りゐて城山はいまだ朝靄のなか |
中芝 寛 |
87 |
稼ぎなき日もありぬべし鷺ひとつ暮れゆく小川に身じろぎもせぬ |
中島 一男 |
88 |
少年の耳は夕焼けの色にしてわれに還らぬものを聴くなり |
中島 義雄 |
89 |
神ありて雨恵みたり干割れ田を踏みつつゆけば水の温くとさ |
中島 淑子 |
90 |
ふくろふが縄張り告ぐるこゑ重くあかつき寒し春あさき山 |
中村 純介 |
91 |
陽のいろを掬ひこぼして秋蝶はただよひゆけり花野のはてに |
難波 幸子 |
92 |
静かなる地球を跨ぐ虹の輪を思いて眠るわれは小さく |
西 文枝 |
93 |
いく処寄せて焚きたる残り火に銀杏はぜつつ昏るる堂庭 |
西本 英子 |
94 |
病窓に見ゆる山並その谷に夫はひとり草刈りてゐむ |
沼本 静江 |
95 |
くぬぎ林うすむらさきに芽吹きそめ山あたたかし暮るるひかりに |
能見謙太郎 |
96 |
誕生寺のいちやうのもみぢ金色の言葉のやうな葉をふりこぼす |
野田たき子 |
97 |
誕生寺の散華さながら雪の上に凍る椿のくれなゐぞ濃き |
萩原 幸衣 |
98 |
わが想ひしづかに育ちゆかむとす雨に辛夷の花盛りつつ |
濱田みや子 |
99 |
点り初めしバスターミナル雨粒を光らせ一台が故郷にむかふ |
樋之津保子 |
100 |
那岐山が茶色に映ゆる日のつづき美作は早き冬に入りゆく |
福田 貢 |
101 |
桃の実を間引く目線が時に合ひ妻がほほ笑む首夏の丘畑 |
藤田 久美 |
102 |
シベリア帰りの爺の形見のハーモニカ少年は吹く「異国の丘」を |
藤原 北湖 |
103 |
食べ惜しみてひとつ残せる白桃が眠れぬ夜をゆたかに匂ふ |
札場富美子 |
104 |
白萩の長き枝垂れの下闇に虫篭ひとつ忘れしは誰 |
松田 雅子 |
105 |
麦の穂の眩しきなかに手を振りて去りしへ昼の月のけぶらひ |
道上 隆三 |
106 |
よう来たと笑顔で迎える母亡くて里は木の実の散る音ばかり |
光延 孝子 |
107 |
はつ秋の夕餉はたのし焼きたての秋刀魚がうまきにほひを放つ |
三宅 義也 |
108 |
しづかなる秋の流れや彼岸へは姑を頼りてゆかむと思ふ |
宮野 愛子 |
109 |
天と地を分けて華やぐ銀すすき鳶より低い大山の峰 |
宮原 迪恵 |
110 |
屈辱に耐へて司馬遷の編みし史記わが人生の玄冬に読む |
宮本 寿夫 |
111 |
明け闇の空に見えねど声移り海鳥いち羽遠くゆくらし |
守安 晴美 |
112 |
嫁きし娘を今朝は語らず霧に咲く白き山茶花愛づる夫かも |
山渋 富子 |
113 |
時国の「仇討つなかれ」茫々に片目川瀬に揺るるもみぢ葉 |
山本 信恵 |
114 |
地におよぶしだれ桜の伏篭のなかにしばしの小鳥となりぬ |
山本 靖葉 |
115 |
身は重く処せられしかど善右衛門を讃へて誕生寺池の水澄む |
両部 常子 |
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